2019年9月27日金曜日
大一光学のOEM 天体望遠鏡 一覧
あまりに奥深いいにしえの天体望遠鏡の世界。
お金持ちや、天文中年のみなさまにとっては、アリガタがどうだとか、タカハシがどうだとか、ドブソニアンは博物館じゃないぞとか、そういう話題で盛り上がっておられることと思いますが、
庶民は黙って、小口径屈折
というわけで、超ド級の入門機に限って集めております。すると、みえてきたのが、あまりにいろんな名前で出ている「大一光学」さんのマシンたち。
もしかすると、出荷台数では、日本一ではないか?と思えるくらいの多彩な姿が見えてきた大一光学のセカイにおつきあいください。
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※ この記事は、ワタクシ松尾バイトの個人的なメモ代わりの記録です。
※ 日本の天文少年を育ててきた「大一光学」のOEM機をとにかく拾い集めるというマニアックな記事です。
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■ ベースモデル
→ OEMモデル(改変含む)
■ 大一光学 50D 50㎜×600㎜
→ スコープテック ラプトル50(のぞき穴スコープ仕様)
→ ケンコー 50D (2倍スコープ仕様)
→ (無印) 50DL (のぞき穴スコープ仕様)
→ コピター 50D (2倍スコープ仕様)
→ コピター 型不明 (ファインダー) (大一506A?)
→ ユニックス F1(2倍スコープ仕様)
→ ビクセン スピカ (2倍スコープ仕様・三脚違い)
■ 大一光学 M-60Ⅰ 60㎜×600㎜
→ ミリオン光学 M-60Ⅰ (のぞき穴スコープ仕様)
→ ユニックス F1-60 (のぞき穴スコープ仕様)
→ 池田レンズ工業 レグルス60 (のぞき穴スコープ仕様) ★おそらく。現行品
■ 大一光学 M-60Ⅱ 60㎜×700㎜
→ 宮部光学 M-60Ⅱ (ファインダー)
まだまだ探して書いてゆくつもり。
2019年9月8日日曜日
手作り 自作 木製三脚を作ろう! ~ スプレッダ搭載編 ~ 開き止めをつける
まいどおなじみ自作三脚を作ろう! 手作り三脚のコーナーです。
前回までは、開き止めのないタイプの三脚を作りましたが
このタイプにはいくつか弱点があります。
■ 脚の上部が台座に当たって止まり、そこに力がかかるために、脚の上部と台座がどうしても大きくなってしまう。
■ そのことによって、タカアシガニのように、台座と脚の高さにクリアランスが必要になってしまう。
などなど。
カメラ用三脚では、開き止めとエレベータのない剛性の高いものも販売されていますが、天体望遠鏡用や、ビデオ用三脚では、スプレッダ(開き止め)がついているものが多いです。
スプレッダがあることによって、三脚全体の剛性もアップしますし、かかる力も分散されるので構造的には部分部分に負荷がかからないつくりで設計できる利点がありますね。
というわけで、完成品を
脚の部材も2本から1本に減らしています。ヘッドもコンパクトで小さくなったのがわかるでしょうか?
今回は
■ 20×20×1100の棒材 3本
■ この棒材を短く切ったもの3本 50ミリ~60ミリくらい
■ 9ミリもしくは10ミリコンパネを切り出した三角形 一辺50ミリ 2枚
今回も廃材を利用したので、棒材は荒材でした。紙やすり・グラインダー等で表面の荒れを取っています。
やすりがけ後。
台座部は、前回で基本ができているので、今回はさらっと解説します。
20×20の棒材に、
■ 3ミリベニヤを20×60に切ったもの 6枚
を使って脚の上部の取り付け部分を作ります。ボンドで貼るだけ。
■ M4 ねじ30ミリと蝶ナット
台座用ねじ、蝶ナットは、今回は30ミリを使いましたが、ベニヤが3と3で6ミリ、棒材が20なので、合計26ミリなのでぎりぎりでした。
35~40ぐらいのねじでもよいと思います。
開き止めは
■ 3ミリベニヤで作った一辺50ミリ三角 2枚
■ 3ミリベニヤで作った 20×120~150ぐらいの板 3枚
で作ります。
■ M4 20mmネジ、ナットセットも3本使います。
これらを組み合わせてボンドで貼ります。 端っこに穴をあけて20mmねじを取り付けます。
スプレッダは毎回三脚本体にネジ止めしてもいいのですが、めんどくさいので今回の設計では、 この飛び出した20mmのネジが三脚に差し込まれるだけで力を持たせるようにしています。
こうすると差し込むだけでよいので、取り付け・取り外しがとても楽になります。
■ 20×20×20のブロックをつくる 3個 穴をあけておく
■ 3ミリベニヤで20×40の貼り付け材をつくる 6枚
これらを三脚上部から任意の長さの位置に木工ボンドで貼り付けます。どの位置に貼り付けるかで三脚の開き角度が決まります。
ブロックに開いている穴にねじの飛び出し部分を差し込むだけ。
※ ちょっと今回やっちまった!のは、ブロックの穴の角度と、スプレッダのねじの角度が、「三脚を開くことで角度がどんどん変わってゆく」ためにズレています。
なので、ちょっとスプレッダがたわんでいます。これはスプレッダに力がかかっているということ。
ところが、この「圧がかかった状態」であることが、結果的に
「脚が開く方向にも、閉じる方向にも動かず、ツッパリが利いている」
状態になっているので、もしかすると結果オーライなのかも・・・。
みなさんが作る時には、角度をあわせたほうがいいのか、試してみると面白いと思います。
ねじは刺さっているだけで、締め付け、止めつけはしていません。なので取り外しも簡単。
スキっと閉じられます。ブロックの部分も干渉しません。
というわけで完成。
今回の三脚は、台座の上部に脚が干渉しないので、前回のように台座の高さをかせぐ「スペーサー」が不要だったり、最小で済みます。
1番費用がかかる木材の量が少ないので、たぶんより安価になっていると思われます。
廃材だからしらんけど。
2019年9月6日金曜日
100均の老眼鏡で「天体望遠鏡」を作る! 第三弾 スターアロー拡張編
まいどおなじみ、100均老眼鏡でつくる「スターアロー」天体望遠鏡のシリーズです。
これまで、スターアロー600とスターアロー380を作ってきましたが、今回はその後いろんな発見・発明があったので
「拡張編」
としてお届けします。
これまでの記事は
スターアロー600
https://arekore-doresore.blogspot.com/2019/08/blog-post_18.html
スターアロー380
https://arekore-doresore.blogspot.com/2019/08/blog-post_28.html
からどうぞ。
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さて、スターアローとはすなわち「チップスター」と「三ツ矢サイダー」からできているわけですが、なななんと!
カルビーのポテトチップス「クリスプ」
でも大丈夫だと判明!!!
すごい!すごい!
これで、オリジナルバージョンの「プリングルス」も含めて、全部の筒チップスで望遠鏡が作れることがわかりました。
オリジナルはmosschさんの「プリエビ望遠鏡」です。
http://www.mossch.com/201883
というわけで、クソリプ・・・じゃなかったクリスプでの製作もやってみたいですね。
しかし、ネーミングの妙はスターアローにはかなわないかなあ。
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そして、拡張編の第二弾は、ツアイスサイズ接眼レンズの装着です!!!
なななんと!三ツ矢サイダーの飲み口に、接眼レンズ・アイピースがはまっちゃいます。
やり方は写真を参考に。
24.5mmのなるべく古いツアイスサイズの接眼レンズを用意します。例ではカートン光学の6ミリですが、ビクセン製など、似たようなものはいろいろあります。
金属筒がねじになっているので、外します。それをそのまま・・・・。
ねじこむ!!
ちょっとキツいですが、タップを切るようにねじ込んでゆくと、けっこうしっかりはまります。
飲み口の径の方がややきついので、気になる人は紙やすりで内径を削ってもいいでしょう。
アイピースのほうが金属ねじなので、うまくタップが切れるといい感じにハマります。
スターアローのドローチューブ部分と合わせるとこんな感じです。
まさに専用設計のようなフィット感。
この接眼レンズが使えると、理論倍率は、スターアロー600の場合、600÷6で、なんと倍率100倍が叩き出せるわけですが、 実際にやってみると
な、なんも見えねえー!!!!
(by北島こうすけ)
倍率を下げようと、スターアロー380で見てみると、
く、くせがすごい!!!!
(byノブ)
・・・いったい何が起きているかというと、歴代の先達がみなコイツと戦ってきたという
色収差
が際立つのですね。
スターアロー600だともはやピントが合っているのかもわかりませんが、スターアロー380だと
かろうじてピントは合います。
しかし、すべての景色が「プリズム」状態で、もはやきんきらきんきんにカラフル。
100均のルーペぐらいだと、月をみても周辺が収差で虹色になるくらいで済むのですが、倍率が上がるともはや写ったすべての対象がレインボーです。
しかし、今回は6ミリという最短クラスの焦点距離のアイピースをつけたからこうなったわけで、まだまだ実験の余地はありそうですね。
なんといっても、 24.5mmという枯れたサイズの接眼レンズがつけられる、ということは
拡張性バツグン!!!!
であることには変わりません(爆笑)
いやあ~、勉強になるわああ。
天体望遠鏡シリーズ 大一光学マニアックス
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※ この記事の内容は、あくまでも推定です。大一光学さんに確認を取っていませんので、マニアの想像上のたわごととしてお楽しみください。
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入門編鏡筒マニアとしての天体望遠鏡の沼シリーズ、まだまだ続きます。
スコープテックさんのラプトルの製造は大一光学さんであることは有名ですが、
大一光学
http://www.daiichikogaku.ecnet.jp/
たとえば、ラプトルの対物アクロマートレンズは「久保田光学さん」製であることが公言されているなど、
久保田光学
http://www.rnac.ne.jp/~uccc/
その構成は、大一光学さんのOEMベースモデルから、いろいろとブラッシュアップされていることが伺えます。
この、「製造・大一光学」シリーズは、調べれば調べるほど面白いというか、沼にはまりこむ奥深さで、もはや松尾は溺れて沈んでしまいそうです(苦笑)
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『スコープテックラプトル50の原型は?』
大一光学ベースモデル(推定) 50D
口径50 焦点距離600㎜で、のぞき穴スコープの鏡筒です。これがベースだと考えられます。
ただし、三脚が現行品は変更になっていて、
大一光学 M60I 口径60 焦点距離600㎜
に近いものに変わっています。伸縮なし三脚です。まったく同じものではないかもしれませんが、つくりは似ています。足の長さがラプトル50のほうが短いと思います。
ラプトル50 伸縮なし 脚89センチ
M60I 伸縮なし 脚110センチ
ところが、このM60Iは、スコープテック品には採用になっていません。とても近い兄弟機なのですが、 ボツになっているのです。
■ ラプトル60 口径60 焦点距離700㎜
■ アトラス60 口径60 焦点距離800㎜
これらに近い大一光学のベースモデルとしては
□ 大一光学 608/618 口径60 焦点距離800㎜
などがありますが、 口径50・60ミリ で 焦点距離800㎜ という構成は、1980年代ごろには入門機としてよくある構成なので、あまり気にしないほうがよいと思われます。
よくオークションで出てくる
■ アトラス光学(現ビクセン) ファミリー800・ファミリー800DX
口径50 焦点距離800㎜
というシリーズもありますが、これも大一光学OEMだと思います。
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M60Iが、基本構成はラプトルシリーズに似ているのに、ベースモデルとして不採用だった理由は、実はなんと
スコープテックのサイトにヒントが!
ちゃんと書いてありました。
対物レンズ (スコープタウン・パツショップ)
https://scopetown.co.jp/SHOP/109323/list.html
スコープテックさんは、いろんな望遠鏡パーツも扱っておられるのですが、ここに自作兼補修用のレンズのコーナーがあります。
その中で、口径60 420/480/600㎜のレンズパーツの記載にだけ、特別なことが書いてあるのです。
”このレンズは設計が古いため、45倍以下の低倍率での使用をおすすめいたします。”
ほかのレンズにはこうした記載がないことから、おそらくM60Iあたりで採用になっていた口径60のレンズは、古い設計である、ということなのでしょう。
そうすると、ラプトル50/60・アトラス60などのレンズは、新設計あるいは大一標準搭載品とはあえて変えていることが推測されるわけですね。
ね~?こんなところまで調べてゆくと、完全に深みにハマりそうでしょ?
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<おまけ>
大一光学の天体望遠鏡については
僕のモノクロームさん
https://kimamaphoto.wordpress.com/2010/09/25/%E5%A4%A7%E4%B8%80%E5%85%89%E5%AD%A6%E3%81%AE50%E3%83%9F%E3%83%AA%E5%B1%88%E6%8A%98%E6%9C%9B%E9%81%A0%E9%8F%A1%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%89/
のブログにも詳しい記述があります。参考まで。
2019年9月5日木曜日
天体望遠鏡と微動雲台マニアックス ~奥深き微動雲台の世界~
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※ この記事の内容は、あくまでも推定です。ビクセンさん・ミザールさんなどに確認を取っていませんので、マニアの想像上のたわごととしてお楽しみください。
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まだまだ天体望遠鏡ネタは続きます。
初心者向け天体望遠鏡の中で、私がおすすめなのはビクセンのスペースアイ600/700であることは前回お話しましたが、 実はマニアながら恥ずかしいことに気づいていなかったことが1点ありました。
それは、実はスペースアイ600/700に搭載されているのは、あの名機
「ミザールのK型微動雲台(K型経緯台)」
である!ということです。
ビクセンなのにミザールとか、話がややこしくなってきますが、その昔、ミザールテックという会社が作った「K型経緯台」というものがあって、それと同じものがスペースアイ600/700についている、ということです。
オリジナルのミザールK型経緯台は
http://www.uctrade-shop.com/used/mizar_k_mount_131120.html
に写真あり。
現行品は
ミザールテック K型微動雲台 (画像はミザールテックさんのサイトからの引用)
http://www.mizar.co.jp/product/view/33
おそらく発売当初のオリジナルと同じ形のものを、別のところに作らせているような、そんな感じだと推測します。
(しかし、ミザールが出しているのだから正真正銘ミザールK型ではあるのだが)
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さて、スペースアイ600/700ですが、斜めになる簡易ウェッジは別で、ちょうど丸い青と赤のシールが張ってある部材の上下が「K型経緯台・K型マウント」と呼ばれる部材です。
全周微動ネジから、鏡筒との取り付け部までがK型経緯台ですね。
さて、このK型経緯台ですが、現在は本家本元オリジナルのミザール製ではなく、たぶんおなじ形のものが別の下請けさんで作られているのかもしれません。(予想です)
ですから、ミザールからもまだ販売されていますが、別のブランドでもK型経緯台と同じ形のものが販売されています。
実は、ビクセンは自社で微動雲台を持っているし、販売しています。
ビクセン微動雲台 (画像はビクセンさんのサイトより引用)
https://www.vixen.co.jp/product/3562_01/
しかし、スペースアイシリーズには、この部材は搭載していません。
基本的に、天体望遠鏡の世界は、国産にしろ中国産にしろ、OEM供給が進んでいて、ある程度セットで仕入れて構成を作って販売する関係で、自社の部材をそのまま使うというわけではないようです。
そこで、 各社の微動雲台を拾い上げてゆくと、面白いことがわかってきました。
<経緯台と微動雲台の関係>
オリジナル
■1 ミザールK型微動雲台 ・・・いわずとしれた名品。
■2 Io Systems Inc 微動雲台 (K型互換品?)(1と同型) ・・・ミザールK型のコピーもしくは、下請けかもしれない。形がまったくおなじ。
■3 ビクセン 部分微動雲台 3562-01 ・・・ビクセンのオリジナル
■4 セレストロン 微動雲台(つき三脚) CE93607 フレキシブル ・・・三脚とセットでオリジナル
■5 ミード AZM 微動雲台(つき三脚) ・・・三脚とセットでオリジナル
※ 微動雲台として単体で販売されているのは、ミザール品・互換品・ビクセン品
つぎは、セット構成での採用具合です。
○ ビクセン スペースアイ50M/70M 部分微動雲台 仮称A
・・・この機種とミザールのTL-750には、独自の微動雲台が載っています。仮称Aとします。
○ ビクセン スペースアイ600/700 K型微動雲台(互換品?)(1) フレキシブル
・・・K型雲台が載っています。ハンドルノブがフレキシブルに交換されています。
○ ミザール MT-70R K型微動雲台(互換品?)(1)
・・・ミザールの商品なんだからミザールK型雲台で間違いないのですが、当時のオリジナルではなく、下請け製?と思われる現行の互換品が載っています。 結果としてビクセン・スペースアイ600/700とおなじ部材と思われますが、ハンドルは短いものです。
○ ミザール TL-750 部分微動雲台 仮称A
・・・ビクセンスペースアイ50M/70Mとおなじ「仮称A」微動雲台が搭載されています。もしかすると三脚ごとおなじかも。
○ ミザール TL-880 部分微動雲台 仮称A+ パンハンドルつき
・・・「仮称A」微動雲台ととても似ているのですが、パンハンドルがついているのでA+としておきました。
○ 池田レンズ工業 リゲル60 微動雲台 仮称B
・・・ビクセン/ミザール系とは異なる別の微動雲台です。セレストロンやミードとも異なります。
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意外とビクセンとミザールで、部材がかぶっているのが面白いですね。
OEM供給元が同じで、とくに「三脚から下はおなじ、鏡筒がそれぞれ別」という感じなのでしょう。
2019年9月1日日曜日
ビクセン スペースアイは、哲学的名機である!
みなさんこんにちは。
初心者向け、チープな天体望遠鏡の沼地にはまり込んで大変なことになっている松尾バイトです。そもそも、こどもと一緒に星を見ようということで、望遠鏡に十数年ぶりに興味を持ってしまったのが運のつき、もはや抜け出せそうにありません。
こどもの時に父親らとともに国鉄アパートの屋上で天体望遠鏡を覗いた小学生時代を思い出しながら、今はこどもたちと楽しんでおります。
さて、そんな中で、いわゆる初心者向け望遠鏡や、チープなモデル、古いモデルなどに興味しんしんになってしまっている松尾ですが、今日は声を大にして言いたいことがあります。
ビクセン スペースアイ600/700は名機である!
と。
この2機種。実はビクセンさんの中ではごくごく入門編扱いで、正規のカタログやらネットの解説には載っていないモデルなのですが、それでもすごい!!
私はビクセンさんの回し者ではまったくありませんが、この機種の構成と設計を見るだけで、ビクセンという会社がどのような哲学を持ってこれを市場に投入しているのかがよくわかるので、そんなお話をしてみましょう。
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と、その前に、「初心者向け、入門者向け天体望遠鏡とは何が求められていて、どんな機種がいいのか」ということを考えるよい記事があるので、そちらを先に読んでいただければ嬉しいです。
天文リフレクションズ 1万円で買える天体望遠鏡 ランキング (全4回)
http://reflexions.jp/tenref/navi/goods/telescope/4472/
この記事は大変に実証的で面白く、「どんな天体望遠鏡が入門者にとってふさわしいのか」についてわかりやすく書かれています。
1万円前後で市販されている4機種が徹底レビューされていて、 仕様なども細かく比較されているので、私も何度も読み返してしまいます。
さて、記事においての順位は
1 スコープテック ラプトル50
2 レイメイ藤井 RXA103
3 ビクセン スペースアイ600
4 ミード AZM50
という結果になっていました。わたくし松尾も、これはこれでとくに異論があるわけではありません。価格と内容のバランス、ラプトル50の実力などを総合的に加味して、こういう順位もアリでしょう。
ところが、かなりとてもすばらしく良記事であるところの天リフさんの記事においても、スペースアイのすごいところが見えていない部分があることに、わたくし松尾最近気づきはじめてしまいました。
それは一体どういうことかというと、古い初心者用鏡筒にハマって、いろいろ比較しているうちに気づいた
「ビクセンの哲学」
についてでした。
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”しょぼい”天体望遠鏡マニア の道を歩みはじめると、いくつかの古典的名機を触ることになります。
たとえば
■ コルキット スピカ
とか
■ 星の手帖社の組立天体望遠鏡
とかの、自作系望遠鏡や、スコープテック ラプトルやその元になった「大一光学製品」などです。
こうした古典的名機と比較して、ビクセンのスペースアイは、まったく異なるアプローチをしようとしていることがわかります。それは、スペースアイ600/700の前機種である「スペースアイ50M/70M」にも、関わりがあります。
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結論から言えば、ラプトル50やコルキットスピカというのは
「コストをかけないで、主に日本製の丁寧な仕事をしている部品を使って、古典的教科書どおりの望遠鏡をお届けする」
というものです。もちろん、細かな改良は施されていますが、「日本製部品を多用することで、よく見える望遠鏡を提供するのだけれど、ただし、なるべく安い部品を使ってコストダウンをはかり、最終価格を安くする」ことが目的であって、そのため基本設計は1980年代ごろからまったく変わっていないということが特徴です。
■ スコープテック ラプトルと同型、あるいは兄弟機は1980年ごろの大一光学機そのものである。
■ ラプトルとコルキットに採用されている天頂ミラー・接眼レンズアイピースなどは、共通部材で、製造メーカーはおなじと思われる。
■ 80年代、90年代の大一光学品にも、おなじ部材がよく使われている。
■ そのため24.5mm径の(ツァイスサイズ)の部材ばかりが多用されている。
■ 旧来のビクセンをはじめ、OEMで数多くのメーカーから出ていた入門機も共通なものが多い。ミリオン光学、ユニックスなど、冠の違う兄弟機、兄弟部材がたくさん販売されていた。
これらの「枯れた」かつ、「大量供給されている部材」の上に乗っかりながら、現代においてもお値打ちに供給できることは、とても大事なことで、すばらしいことだと思います。
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ところが、ビクセンのスペースアイは、これとは真逆のアプローチで製品づくりがされています。
スコープテックやコルキットが
「日本製部材の中で、枯れた最安値のものをチョイスして構成する」
方式を取っているとします。
ミードやレイメイ藤井は、「中国製品・部材をうまく取り入れながら、基本的な構成で安く仕上げる」方式を取っています。
とすると、ビクセンは
「最新、最高の機構を、中国製造によって安価に仕上げる」方式なのです。
中国製部材が多様されていますから、時として枯れた日本製部材に負けているような印象を与える場面があるかもしれません。
(スペースアイの鏡筒は、おそらく単体ではラプトルに負けるかもしれません)
しかし、そこに流れている哲学は、かなりすごいです。シビレます。
<哲学1> ツァイスサイズを捨てて、31.7mmアメリカンサイズに切り替えている。
他社の入門機がまだ「24.5mmツァイスサイズ」の部材を多様しているのに対して、本格機ではすでに切り替わり済みのアメリカンサイズになっています。
面白いことに、スペースアイ50M/70Mはその過渡期で、ドローチューブまでは24.5㎜の部材で、天頂ミラー以降を31.7㎜にするという「変則技」でアメリカン対応をしていました。
スペースアイ600/700は完全に31.7㎜機です。
(ドローチューブが太い)
<哲学2> 接眼レンズにも手を抜かない。
天リフさんの記事でもわかりますが、ビクセンの付属アイピースはすべてケルナー型です。
ラプトルはケルナー20mmとF型8mmが付属。F型はハイゲンスの簡略版で、ハイゲンスでは平凸レンズ2枚に対して、Fではただの凸レンズ2枚です。もっとも安い構成だとわかります。視野も狭いです。
ミードや、レイメイ藤井の機種は、ハイゲンスとSR(スペシャルラムスデン)を採用、SRは両凸レンズで製作される事例が多いようで、つまりはFと似たようなもの。
<哲学3> 鏡筒はアリミゾで乗せる。
中級機ではよく知られたアリミゾ式がスペースアイ600/700では採用されています。スペースアイ50/70では、1/4インチネジ式でした。
それでも設計思想として「多機種、汎用機種にも移行しやすい」ことを念頭に作られていることがビビビとわかります。
大一光学とすぐわかる独自ネジ止め式や、フォーク式と異なり、上位機種からきちんと降りてきた仕様であるというこだわりです。、
<哲学4> 赤道儀になる経緯台と微動つき
スコープテックや、大一光学の「フリーストップ・プラ架台・三脚」はローコストで設計された名品です。
あのつくり、あの価格で、あの前後バランスがとれた仕掛けが成立しているのは、ある意味ではすごいことです。
各所で絶賛されている、こどもさんがすぐに「取り回せる」という意味では、こちらも間違いなく逸品でしょう。
しかし、ビクセンの思考パターンは、入門機から次のステップも視野に入っています。
スペースアイ50M/70Mでは、一部微動つき架台
スペースアイ600/700では、全周微動つき、かつ簡易赤道儀機能
がついていて、「天体望遠鏡の三脚はこうなっていて、こうあるべきだ」という教えが詰まっています。
次のマシンへ移行したときに、予習ができているというしくみですね。
実売1万円台の入門機で、全周微動と簡易赤道儀(ななめになる)がついた機種はスペースアイ以外にはありません。
もちろん、中国製なので、ギアの具合が硬いとか、いろいろ細かいところは微妙な部分があるにせよ、それでも「これをやりたいんだ!これを届けたいんだ!」というビクセンの哲学は詰まっています。
<哲学5> 組み立てやすい、使いやすいように工夫はある
中級機の真似事とはいえ、すべてを詰め込んでいるので、三脚も架台も大きく、扱いづらいものになりがちですが、可能な限り「使いやすい」ことにはビクセンなりに考えられています。
無策なのではなく、「できるだけ考えて」の結果があのモデルだということです。(もちろん、もっとブラッシュアップされるかもしれません)
たとえば↑のスコープ台座は、差し込めば止まるようになっていて、これまで当然であった2つのネジ止めは不要です。部材点数は増えているので、コストが上がっているわけですが、こういう部分はなるべく手間をとらせないようにしていることがわかります。
また、スコープの3点支持は、天リフの記事でもありましたが、1本がバネ式になっています。
もっと詳しいことを言えば、残り2本のスコープ止めねじは「プラスチック」製で、スコープを痛めにくいようになっているのです。
(スペースアイ50/70は金属ネジでしたが、スコープのまわりに透明のプラスチック筒が別についていて、傷がつきにくいようになっていました。こういうところに哲学を感じます。設計部門は、ちゃんといろいろ考えて、細かいところにも気をつかっていることがわかります)
★余談ながら、松尾のスペースアイは、金属ねじに変えてあります。
← 左側がオリジナルのプラねじ。
右側が交換したM4ネジ10ミリ→
========
レンズ面はこんな感じ。ふたつきフードを外すとアクセスできる。
こうして全体像を見ると、スペースアイ600/700は、
「中国製であることによって安価にしているが、その中ではできるだけ中級機に近い仕様を、”ここは、こんな機能になっているんだよ!”と説明しようとしているマシン」
だとわかります。
それが証拠に実は「モバイルポルタ A50M」という構成が過去にあって、これは
ポルタ系架台・三脚に「スペースアイ600」の鏡筒を載せたもの
です。中級機との合いの子がすでに出ていたというわけ。
それを考えると、完全に入門機であるはずの「スペースアイ600/700」が実に面白い機種だとわかると思います。
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